98年9月15日 火曜日 晴 
 ドレスデン近郊のナローSLを訪ねて
 



 今日は、ツイッタウのナローSLに乗りに行くため、早起きをしました。午前中の列車に乗るためにはドレスデン7時発の列車に乗らなければいけません。
 6時過ぎに下へ降りるとすでにバーが営業していて、お客さんが数人コーヒーを飲んでいました。この時間で朝食OKな訳です。朝食は例によってコーヒーだけ持ってきてくれて、後は、置いてある好きなものをとる方式です。しかし、コーヒーと一緒に持ってきてくれたゆで卵がおいしかったのです。

 食事を終えてメモ紙の預り証を見せてお釣りを返してもらい、ホームへ。しかし、時刻表にある列車は予定の時刻になっても来ませんでした。よく見ると、この列車にはSバーンの印が付いていません。おそらく、ケムニッツ方面からの列車なので線路工事の遅れの影響が出ているのでしょう。
 次の6:53発Sバーンは定刻に来ました。渓谷沿いの路線を右に左にカーブを続けながらゆっくり進みます。しかし、ドレスデンに到着したのは7:09でした。すでにツイッタウへの接続列車は発車してしまっています。仕方なく、予定になかったラーデボイルを訪問することにしましょう。
 さて、ラーデボイルへの列車はと、時刻表を見ると高架ホームから出ようです。なんとか見つけて列車の前で待ちます。しかし、様子が変です。客車はすでに止まっているのですが、機関車がつながっていません。そのため、車内へ入れないのです。車掌も困った顔をして立ちぼうけです。
 そのうち放送が流れました。そして、待っているお客がぞろぞろと他のホームへ動き出したのです。おそらく先発列車が変更になったのでしょう、その列について隣のホームへ行くとSバーンがやってきました。車掌にラーデボイルへ行くかを確認してから乗り込みます。

 5分遅れの7:35に発車。ドレスデン・ノイシュタットを経由してナローの機関庫の並ぶラーデボイル・オストへ7:48に到着しました。しかし、SLの姿はありません。やはり運休中なのでしょうか。
 ホームのレールは光っているので、駅の時刻表で確かめると確かに走っています。なんと、今出発したばかり。しかし、やはり、路線工事のため途中のMoritzburgで折り返し運転を行っていて、その先はバス代行の掲示のようです。8:37に到着する列車があるので、一駅歩いて捕まえることにしました。
 駅舎を出て左に行くと左手に跨線橋があります。本線と平行してナロー線が走っています。跨線橋を渡らずに右に曲がり、ナロー線沿いの道路を歩きます。しばらくすると本線から右手に分かれます。線路と同レベルになり、道路脇に線路が引いてある区間の道路を歩きます。
 この辺りは住宅地で、路面電車ならまだしもSL列車が走っているなんて信じがたい感じです。道路が十字に交差する地点に踏切があります。線路と道路の間には柵なんて野暮なものは全くありません。
 道路がY字に分かれて線路は右へ曲がります。そうすると市電の線路がある大通りと交差します。そこに次の駅WeiBes RoBがありました。なんと市電と平面交差をしています。



 駅の時刻表を見ると8:31発ラーデボイル・オスト行きがあるようです。この駅、駅舎らしいものはあるのですが入れません。脇のバス停の待合室のような小屋で待ちます。そして、線路の脇に砂利が引いてあるだけでホームがありません。 時間が近づいたのでホームへ出ると、かすかに汽笛とドラフト音が聞こえてきました。後ろ向きの機関車がカーブを曲がって駅に進入してきます。そして目の前に列車が停車しました。あれっ後ろからも煙が・・・。そうです。プッシッュプル運転なのです。後で聞いた話ですが、途中の折り返し駅で手間を省くためなのか、機回しが出来ないからなのか、このようなプッシッュプル運転を行っているらしいです。



 この線の客車は原型を保っていて、ほとんど木製なのがうれしい。窓は一段下降で窓を上げるときは皮のバンドを引き上げるという古典的なものでした。車内は木製ですが、ペンキで塗られていました。
 さっき歩いてきた所をゆっくりと進みます。まず、路面電車を待たせて平面交差をします。踏切で横断しているので道路側を待たせます。住宅地の道路と併走しながら進みます。残念ながら車の方が早いようです。本線と合流してしばらく併走するとラーデボイル・オストに8:37に到着しました。
 名残惜しいですが、ツイッタウへの列車が少ないのでこれまた4分も遅れてきた8:45発のSバーンに乗り込みます。途中で信号待ちで何度も停車して、また乗り遅れるのかなとやきもきしながら、ドレスデン・ノイシュタットに9:00に到着しました。ドレスデン近郊の列車は遅れがちですので、ご利用の際は皆さん余裕を持つことをお勧めします。
  コーヒーを買って9:09発のRE準急ツイッタウ行きになんとか間に合いました。2扉が中央に寄った近郊型客車です。ドア間の1等車には、なぜかお客はあまり乗っていません。ドレスデン方面から接続らしい列車は到着せずに定刻に発車しました。
 この先はポーランド方面への本線ですが、非電化なのでディーゼル機関車が牽引します。複線の本線を走行中、昨日乗車したレールバスとすれ違ったのには驚きました。
 Bischofs-Werdaで本線から分岐してツイッタウへのチェコとの国境線ぎりぎりの地帯を進みます。ちょっと雰囲気が違うのが分かりました。この辺りは列車本数が少ないのであまり交換しません。丘陵地帯の丘に沿って列車は進んで行きます。
 10:52にツイッタウへ到着しました。チェコ方面への国境駅で、駅の中のチェコ方面のホームに入るには、税関を通るようになっていて、柵で囲ってあります。たまたまチェコ方面へのかなり古いディーゼルカーがけたたましいエンジン音を響かせて2両のトレーラーを引っ張って発車して行きました。この列車は、チェコ国内からツイッタウを経由してまたチェコ国内へ戻るという変わった列車です。この辺りの複雑な国境線が生んだ列車と言うでしょう。したがって、ドイツ領内に入るのに、ツイッタウで降りなければ、国内列車扱いです。



 これから乗るナローSLの駅は外にあるらしいので、駅前へ出てみると駅前広場をナローゲージの線路が横断していました。ちょうどSL列車が着いた後らしく、昨日フライタールで会ったおじさんがスーツケースを引っ張ってこちらへ向かってきます。つかの間の再会ですが今日中に仕事場へ戻らなければいけないそうで、私の乗ってきた折り返しの列車でドレスデンへ戻って行きました。
 SLの発車までまだ時間があったので町中の郵便局まで切手を買いに行きます。列車の閑散ぶりとは裏腹に街は買い物客で賑わっていました。
 発車時間が近づいたので駅へ戻ると、向かって左の機関庫の方から煙が上がっています。右には工事中の小さい木造駅舎と木造の屋根がついた島式ホームがあります。観光バスが来て客を下ろすと、どやどやとホームへ入ってきました。
 駅前広場を渡ってホームに99−735のナローSLが牽引する車掌室と荷物室の合造車1両を含めた5両編成の列車が据え付けられると、11:42に発車です。私の乗った一番前の車両は、ビデオカメラや普通のカメラを手にしたその道の人ばかりです。デッキに出てみたり、通路を行ったり来たりして落ち着かない様子です。客車は、ドイツのナロー線ではポピュラーな緑に塗られた標準的なオープンデッキの鋼製車です。



 列車は発車すると左に曲がって国鉄の本線を平面交差で横断します。そして、本線の左側の坂を平行して下って行くのですが、本線は下らずに築堤から石積みの高架線へ変わって行きます。
 高架線に貼り付いたZittau Haltepunktに停まり、本線の石積みのアーチ橋を右カーブしてくぐると町並みの中へ入って行きます。途中川を渡るのですが、川の上で道路橋と交差した十字の橋になっているのをはじめてみまし
た。ちゃんと橋の真ん中に踏切が付いています。 途中車掌の検札が来ましたが、ユーロパスを見せると使えないと言われました。やはり、第3セクター化されています。車掌から赤い切り取り式の車内券を買うと、7.40DMでした。
 町中のZittau Sud にとまります。いちおう交換出来ますが、使われていないようです。なぜか信号所のボックスの中に駅員はいました。なんか開放的な駅です。
 築堤の坂を上がって、川を渡り下り込んで(道路だったかなぁ。記憶があいまい。)重厚な上屋が付くホームと駅舎のある歴史を感じさせるZittau Vorstadに到着しました。旅客通路がちゃんと地下道になっているなど、なかなか味のある駅です。
 ここを出るとしばらく牧草地と畑の広がる丘陵地帯の登りが続きます。2駅停車して、いよいよ分岐駅のBertsdorfへ到着します。この列車は、団体さんと一緒にKurort Oybinへ向かいますが、もう一つの終点の方がちょっと長いので、Kurort Jonsdorf行きの99−787が牽引する車掌室と荷物室の合造車1両を含めた4両編成の列車に乗り換えました。



 この時間だけ、ダイヤの都合で同時発車となります。期待したのですが、ちよっとずれてしまったようです。  Kurort Jonsdorf行きの列車は、右へ急カーブして森へ分け入って行きます。早速車掌が検札です。さっき買った往復切符を見せると、切符の値段の部分を見せ、どうやら足りないと言っているようです。要領を得ないので、仕方なく、足りないと言う4.20DMを払いました。ちゃんと切符をくれたので、間違いではないようです。後で、運賃表を確認すると確かに終点まで1ゾーン分足りないことが分かりました。まぁそれでもSL特別料金を含めて往復900円ですから安いものです。
 森を抜けるとKurort Jonsdorf Hst に停車し、谷間の中腹を行きます。ちょっとした集落を形成していて、緑の多い綺麗な街が広がっています。  そして、12:30に赤い2階建ての駅舎がある終点のKurort Jonsdorf に到着しました。ここからチェコの国境までは数キロです。駅舎には駅員はいないようで、切符の窓口も閉まっていました。降りたお客は、地元の人数名と、その道らしい私以外のもう一人の青年でした。すぐに機関車が切り離されて1本しかない入れ替え線で、機回しが始まりました。もう一人の青年も撮影に忙しいようです。



 数名の地元のお客を乗せて12:45に発車しました。帰りは機関車が逆向きで牽引します。Bertsdorf の場内信号で、いったん停車。汽笛を響かせて、構内へ進入するともう一つの終点からの列車が到着して待っていました。乗車列車は、このままZittau に向かいますが、反対側の列車に乗り換えれば、機回しの後、すぐに発車してもう一つの終点へ行くことが出来ます。そうすれば、全線完乗が出来るのですが、強行軍の悲しさで、ここは涙を飲むことにしました。もう一人の青年は、乗り換えて行きました。
 発車して行くと、反対側の列車の最後部には手持ちぶさたのおばさんウェイトレスが乗っているBarCarが連結されているではありませんか、いゃあビールを飲みたかったなぁ。そして、記念グッツもあったかもしれません。なにせ、駅がみんな無人駅なので、記念品を手に入れられないのです。そのようなものを売っているのか広告も見あたりません。また来た道を戻ると、途中の駅から地元のお客がぱらぱらと乗ってきます。Zittau に13:30に戻ってきました。

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